犬の遺伝病についてアレコレ調べてみた!1匹でも多くの犬が先天性疾患を持たずに生まれるために

こんにちは!ドッグスリング専門店の黄瀬(@tommykise)です。以前、犬の遺伝病についてこんな記事を読みまました。

「売れる犬」ゆがんだ繁殖 遺伝性の病気、日本で突出

AHBの研究所長も務める筒井敏彦・日本獣医生命科学大名誉教授は「大学付属病院で犬の遺伝性疾患を長く見てきた。『日本は世界でも突出して犬の遺伝子疾患が多い』と言われる」と話す。

かなり衝撃的な内容です。この記事内によると日本で遺伝病が多い理由の一つとして、繁殖方法にその原因があると指摘されています。そこで今回は、繁殖の段階で遺伝病をできる限り減らすことができるのか?調査していきたいと思います。

また、このブログを書く前提として現在遺伝病と闘っている犬達の存在やパートナーさんの愛情を否定する気持ちは一切ありません。さらにこのエントリーでも書いたように犬を迎えるということは養子を迎えることと同様ですので、病気を理由に手放すという選択肢はわたしにはありません。

ただし、これから生まれる犬達に関しては、
一生を通してできる限り心身共に負担のない生活を送ることができるようにと願って、この調査を進めた次第です。

ではさっそく本題に入りたいと思います。
そもそも、遺伝病とは何かについてはこちらの記事をお読みください。

本当に日本には遺伝病の犬が多いのか?

さて上記の記事で指摘されているように、日本には本当に遺伝病を持った犬が多いのでしょうか。

記事内ではウェルシュ・コーギーについてこんな記載がありました。

たとえばウェルシュ・コーギーでは、10歳前後になると変性性脊髄(せきずい)症(DM)と呼ばれる病気を発症する可能性がある個体が約48%もいる。

 

約半分の確率で発症!?

また、他にもこんな調査報告がありました。
日本動物遺伝病ネットワークJAHDが2000年から2001年にかけて国内の家庭犬のラブラドール・レトリバーについて遺伝病のなかで最も一般的な「股関節形成不全」について調査した結果がこちらです。

調査結果では、調査した犬の、実に46.7%にこの疾患の発生が認められました。これは、米国での11.7%に比較して4倍近く高い発生率でした。

現在、この犬種の年間の国内飼育登録数は26,672頭であり、この調査結果で換算すると年間12,109頭も罹患していることとなります。

こちらも約半分の結果です…
ちなみに、わたしの周りのラブラドールと暮しているパートナーさん達は「ラブだからね、仕方ないのよ」と話をされていました。

また、今は愛犬に遺伝病が発症していなくても、将来なる可能性があるかもしれない…そんなことが頭をよぎってきました。

今のわたし達にできることはないのでしょうか?

遺伝子(DNA)検査をしてみよう!

調べていくと、一般社団法人犬の遺伝病研究会にこんな記述がありました。

既に愛犬と生活されている飼い主さんに関しましては、ご自身の愛犬が遺伝病に罹るような変異遺伝子を保有しているかどうかを確認するために遺伝病のDNA検査をしていくことが大切となります。 遺伝病の早期発見と発症予防、今後の生活のシュミレーションをおこなっていくことは愛犬と飼い主さんが抱える可能性のあるリスク軽減へ役立ち、愛犬の幸せな日常生活へと繋がっていきます。

なるほど。確かに愛犬と暮しはじめた時に、犬友の先輩から「プードルは股関節が弱いからあまりジャンプさせちゃだめ」とアドバイスをいただいていました。今考えると根本の意味はここだったのかと納得しました。

ちなみに、わたしのご近所さんにはトイプードルが罹りやすい遺伝病の一つ、「進行性網膜萎縮症」になった子がいます。サングラスをかけてお散歩をしていますが、おしゃれのためではなく太陽の光から目を守るためでした。

近所のトイプードル

参考までに、動物遺伝子検査・分析のプロフェッショナルである株式会社VEQTAで犬種別に可能性のある遺伝病のリストがご覧いただけます。でも実際、愛犬の遺伝子検査をするとなるとその結果を知るのに少々心の準備がいりそうです…。

しかし!
遺伝子検査をすることにより、愛犬の身体の状態を事前に把握しておくことで、まずわたし自身が病気について勉強でき遺伝病になったとしても慌てることがありません。さらには早期発見につながり愛犬の負担をできる限り取り除くことができる可能性がありますし、今から手術代も貯めておくことができます。

これは、愛犬にとってもわたしにとっても
メリットが多いはず!

というわけで、少々ビビリぎみですがわたしも愛犬との未来の生活プランを立てるために勇気を持って遺伝子検査をしようと思います。検査結果はまたこのブログで報告したいと思います。

さて、なぜこんなにも日本に遺伝病を持った犬が多いのでしょうか?

遺伝子検査をしていない犬が繁殖犬に?

「遺伝病のペットが日本で放置されているのはなぜか」にその理由が書かれてありました。

かつて日本獣医師会会長を務め、現在は2015年3月に発足した一般社団法人『犬の遺伝病研究会』の理事長をしている山根義久氏は話しだした。
「ドイツでは遺伝子をチェックし、子孫に高い確率で病気が発現しそうな、繁殖に向かない個体については、繁殖禁止です。日本はチェックをせず、人気の犬種を無制限に繁殖させています」

え!?繁殖時に遺伝子検査をしてないの!?
一般社団法人犬の遺伝病研究会によると、遺伝病は見た目で判断できないとここに記載がありました。

では、なぜブリーダーは遺伝子検査をしていない両親犬を繁殖させるのでしょうか?「売れる犬」ゆがんだ繁殖 遺伝性の病気、日本で突出」によると、

ミニチュアダックスフントのなかでも白い毛が交じった「ダップル」という種類がはやり、高値で取引されていたことがあるが、今本氏は「この毛色になる遺伝子を持つ犬同士の交配では死産や小眼球症、難聴になる個体が確認されている。(ブリーダーは)はやりの毛色ではなく、まず犬の健康を求めてほしい」と話す。

鹿児島大の大和(やまと)修教授は、プードル、チワワ、ダックスフント、柴犬(しばいぬ)など特定の犬種に人気が集中する日本独特のペット事情にも原因があるとみる。

「特定の犬種がメディア報道で爆発的に流行し、短期間で可能な限り多くの個体を生産する努力が払われる。そんな土壌が遺伝性疾患を顕在化させ、新たに作りだす要因になっていると推測される」

なるほど、希少性と人気を重視するあまり犬の健康には目が向けられていない現状があるということですね。またブームは一瞬で始まって一瞬で終わるものなので、飼う側の熱が冷めないうちに産ませて売る。まさに物と同じ考え方だということです。

遺伝子検査をすれば遺伝病は減らせるのか?

では、もし
両親犬の遺伝子検査をすれば、遺伝病は減らすことができるのでしょうか?

動物の遺伝子検査・分析のプロフェッショナルである株式会社VEQTAの取締役桒原賢次氏に電話でお話しを伺いました。

「遺伝病はまだまだ未知な病気もありますが、犬種別に罹りやすい遺伝子疾患がありますので、検査をすることで原因因子を保持しているかどうかは明確に分かります。また繁殖する犬の遺伝子検査を行えば生まれてくる子供へのリスクは減らすことができます。」

つまり、犬種別に罹りやすい遺伝病についてのリストはありますが、まだまだ研究途中のものや分からない病気があるということ。ただし、できる限り減らすことができるのであればやはり遺伝子検査は有効だとわたしは考えます。

日本動物遺伝病ネットワークJAHDに繁殖する両親犬に遺伝子検査を取り入れた実例がありました。

遺伝性疾患を減らすには疾患の発症のない犬同士、あるいは疾患の発症していない家系(ライン)を選び交配させていくことがもっとも重要です。その取り組みを行ったスウェーデンでは、股関節形成不全の有病率は13 年間で46 %から23 %(半数に減少)に低下させることが出来たという実績があります。

ここであえてお伝えしたいことは、人間にも遺伝病はあります。遺伝病を持った人同士の結婚や出産を否定する気持ちはありません。もちろん遺伝病を持って生まれた子供の存在も同様です。

しかし、犬の場合は人間とは違い、人の手、つまりブリーダーの手によって父と母が選ばれ子が生まれます。ブリーダーは仕事として犬を繁殖させるわけですから、健康な犬を繁殖するために最善をつくすことはブリーダーの使命であるとわたしは考えます。

 

では、本当に日本に遺伝子検査をしている
ブリーダーはいないのか?

というわけで、Googleさんで検索してみました。

 

ありました泣
日本にも両親犬に遺伝子検査を取り入れているブリーダーさんはいました。たとえばここ、トイプードルのレッド専門の「トイプードルハニー」。(※遺伝子検査の有無のみについて調べたため、その他の情報について詳しくはご自身でご確認ください。)

というわけで、健康な犬の繁殖をされているブリーダー様、ぜひ仲間を増やしていってください。切に願います。

最後に

以前に書いたエントリーで、朝日新聞出版アエラ編集部が編集した保健所に犬を捨てる理由を紹介しました。もう一度ご覧ください。

1位:犬の病気・けが・高齢
2位:飼い主が病気・死亡
3位:転居
4位:鳴き声がうるさい
5位:人を噛む
6位:金銭的な問題

なんと、悲しいことに1位が犬の病気なのです。1匹でも多くの子が一生涯しあわせに生きるためにも、できる限りの原因は取り除きたいものです。

そして本日22時よりNHKのTV番組「クローズアップ現代」で「あなたのペットは大丈夫!?~追跡 ペットビジネス・遺伝病の闇~」が放送されます!より良い犬達の環境づくりのために、一人でも多くの方に伝わりますように。

さて、今週末にでも見ようと思っていた映画をちらっとご紹介。
250頭の犬が映画出演していますが、なんと全頭が保護施設で暮らす犬達なのです。出演後、全頭に新しい家族が見つかったという、なんともほっこりするハッピーエンド付きです。

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