専門家が回答!犬にスリングは良くない?正しく選ぶ&使うポイントも解説

冬用ドッグスリングで紅葉を楽しむプードル
「ドッグスリングは愛犬に良くないのでは」「犬にスリングはかわいそうでは?」と不安に思う方が多くいらっしゃいます。愛犬にとって良くないというほか、使う人にとっても良くないのでは?という不安もあるようです。
 
今回はドッグスリング専門ブランド「erva」の代表・黄瀬さんに「スリングは良くないの?」という質問にお答えいただきました。

スリングは犬にとって良くないの?

「犬にスリングは良くない」と思ってしまう理由

愛犬家の方が「愛犬にとってドッグスリングは良くないのでは」と不安になる理由は以下の3つが多く挙げられています。
 
・愛犬の腰に負担がかかりそう
・中に入る愛犬が狭くて苦しそう
・愛犬の足場が不安定になりそう

 
また、人の目線では以下の2つの懸念がある方が多いようです。
 
・肩が痛くなりそう
・腰が痛くなりそう

 
これらの懸念点は、裏を返せば「ドッグスリングを選ぶ基準」や「ドッグスリングを正しく使うための着目点」になるのではないでしょうか。これらの懸念点を払拭できるドッグスリングを選ぶこと、そしてドッグスリングを正しく使うことで、使う人と愛犬にとってスリングが「良いアイテム」になるのではと考えます。
 
多機能タイプのスリングに入る小型犬シュナウザー

ソボクな疑問…「スリング」と「抱っこ紐」は違うもの?同じもの?!

-しばしばドッグスリングは「犬用の抱っこ紐」とも呼ばれることがあります。個人的に「抱っこ紐」と聞くと、人間の赤ちゃんの抱っこに使用される「身体は支えられているけれど足がブラブラになる抱っこのアイテム」を想像してしまうんです。そうだとすると、いやいや愛犬に「抱っこ紐」はちょっとどうなの?と心配になってしまいます。「スリング」と「抱っこ紐」って、同じモノなのですか?
 
黄瀬さん「厳密に言いますと『スリング』と『抱っこ紐』は異なるものです。赤ちゃんの足がブラブラする状態になるのは『抱っこ紐』のイメージが近しいですね」
 
東京大学学術機関リポジトリで発表された論文「地域に伝わるおんぶ具の変遷 ―出雲「子負帯」と天草「もっこ」を事例に―」によると、昔は『子守帯』『おんぶ紐』などと呼ばれていたそうです。抱っこは「前おんぶ」と表現されていたことも。(背中での「おんぶ」が基準だったことが興味深い!)もとは細い帯のような形状でしたが、現代では赤ちゃんの身体をしっかり支えられるような形状に進化しています。
 
一方『スリング』は抱っこ紐よりも幅広な布でできており、片方の肩に斜め掛けして使用するアイテム。ハンモックのようにたわんだ部分に赤ちゃんを入れて抱っこをするという違いがあります。人間の赤ちゃん用では体全体を包み込むタイプのほか、赤ちゃんのお尻の部分だけハンモック状になっているタイプもあるようです。
 
人間用抱っこ紐で眠る赤ちゃん
黄瀬さん「厳密には両者に違いがあるのですが、ドッグスリングのことを『抱っこ紐』『抱っこする紐』と呼ばれる方が結構多いため、私たちもドッグスリングを『抱っこ紐』と呼ぶことがあります。まだ『スリング』という名称がマイナーなのかもしれません。イメージとしては『抱っこ紐』というカテゴリーの中に『スリング』があるという感じです」
 
もしかすると、ドッグスリングは愛犬の足がブラブラする状態や「人間の赤ちゃんを抱っこするときのように縦抱きになる」と思ってしまって、愛犬に抱っこ紐を使うのは良くないと感じてしまった方もおられるかもしれませんね。
 
人間の赤ちゃんや子供と犬とでは身体の作りが違うため、背骨を地面に垂直に立てて抱っこすると愛犬に大きな負担がかかってしまいます。その状態で使うなら「犬にとってスリングは良くない」と言えます。

足場が不安定では?という懸念

-私、ハンモックってちょっと怖いんです。腰かけるとグラグラしますし、寝転んだ後もゆらゆらと不安定になる感覚…身体を委ねた瞬間にプリーン!と落ちてしまいそうで(笑)。愛犬の体重を布だけで支えるドッグスリングは「愛犬が不安定になってストレスがかかるのでは?」という意見を多く目にしましたが、どうお考えでしょうか?
 
黄瀬さん「確かに、お客様の中には『底に板があった方が良い』という方もいらっしゃいます。底に板がないと中にいる愛犬が不安定になるのではないか、という不安です。しかし、必ずしも底板があれば安定するというわけではないんです。スリングの底だけでなく、肩に掛ける部分を含めてスリング全体が愛犬の身体を支えられていないと、中の愛犬が不安定になってしまうんです。愛犬だけでなく、着用する方の身体にもしっかり密着することが重要です。中の不安定さが気になる場合、底板の有無というよりも、そのスリングの生地感やサイズ感が愛犬と着用する方に適していないという可能性が高いように感じます。もちろん、中には底板があった方が良いわんちゃんもいますので、中に入るわんちゃん次第、という面もあります。逆に『底板があると愛犬が不安定になる』と言ってご来店くださった方もいらっしゃいました」
 
底板があればよいというわけではなく、スリング全体の安定感が重要なのですね!

理想は「腕での抱っこ」に近いこと

-ervaさんのドッグスリングは、愛犬を入れて着用した際のスリング全体の安定感を重要視して設計されているそうですね!使用されている生地は360kg(『メッシュスリング』は250kg)の負荷をかけても破れないことが検証されていると拝見しました。「多機能」タイプの耐荷重は30kgもあって、中型犬の愛犬でも使える頼もしさ。やはり「生地の強度」がervaさんのドッグスリングの強みでしょうか?
 
黄瀬さん「私はもともと家業として人間の赤ちゃん用の抱っこ紐メーカーを営んでおりましたので、安全性の高い抱っこ紐を作るためには強度のある生地を使うことが大前提でした。ただ、生地が硬すぎると肌触りが悪くなってしまうので、私たちervaは強度と肌触りの両立を重要視してドッグスリングを作っています。私たちのドッグスリングに使用する生地には、帆布・デニム・播州織(ばんしゅうおり)など数種類あるのですが、それぞれの生地の『体重が掛かった時の伸び』まで計算して、伸びたとしてもSサイズならSサイズ、MサイズならMサイズに留まるように作っているんです。私たちはドッグスリングで『愛犬を腕で抱っこする状態』を表現することを目指しています
 
腕での抱っこは、愛犬が人の両腕全体でしっかり支えられています。そして、人の胸部や腹部などにも愛犬がフィットしていますよね。理想的なスリングは「腕で抱っこした状態に近いこと」なのですね!
 
骨や筋肉がある腕での抱っこを布で表現するためには、生地の強度が必要です。また、愛犬の安全性だけでなく、生地の強度は人の肩や腰への負担も軽減するためにも重要です。愛犬の体重が肩に一点集中してしまうと痛みが出てしまい、腰への負担も大きくなるためです。播州織の生地に関しては糸から開発されたとのことで、ervaのドッグスリングは使う人と愛犬を深く考えて作られていることがわかります。
 
播州織のドッグスリングに入って落ち着く小型犬

愛犬が暴れる原因がスリングではない場合も多い

-ドッグスリングを使ってみたとき、わんちゃんによっては暴れてしまって上手く使えないことがあると思います。そうすると「スリングがストレスになって愛犬にとって良くないのでは?」と不安になってしまいますが、いかがでしょうか?
 
黄瀬さん「確かに『スリングが苦手』という子もいると思います。しかし、スリングで暴れてしまう場合、スリング自体が原因ではない場合も結構多いんです。

サイズや入れ方が適切ではない場合

適したサイズを使用していないとき、愛犬に見られる仕草があるそうです。
 
・スリングの中を前足でカリカリ掻き続ける
・スリング内でモゾモゾ動く
・着用する人の肩の方へ登って行こうとする

 
このように、サイズが合っていないゆえスリングの中が落ち着かずソワソワしてしまうのだそうです。
 
誤ったサイズの多機能ドッグスリング
黄瀬さん「今使用しているドッグスリングが愛犬と着用する方に適したサイズなのか、もしかするとサイズが合っていないから愛犬が落ち着かなくて嫌がっているという可能性があります。そして、適したサイズを選ぶとともに『愛犬の入れ方』も大変重要です。中にいる愛犬が無理な姿勢になってしまっていると、愛犬は落ち着いていることができません」
 
愛犬に対してドッグスリングが大きすぎる、または着用する方にとって大きすぎると、愛犬がグラグラと不安定になってしまいます。
 
・愛犬の身体を包み込むようにフィットしているか
・着用する方の身体にフィットして揺れにくいかどうか
・愛犬を適切に入れられているか

 
この3点が重要ですね。
 
正しいサイズの多機能ドッグスリング

「人の気持ち」と「愛犬の気持ち」の相違が原因であることも!

黄瀬さん「わんちゃんが『遊びたい!』と思っている時にドッグスリングへ入れてしまうと、必死で外へ出ようとしてしまうことがあります。ドッグスリングがイヤなのではなくて『もっと遊びたい』『もっと匂いを嗅ぎたい』『もっと外の様子を見たい』といった気分なのに、それができない状態がイヤなのではないか、という場合をよく目にします。特に遊び盛りの子犬ちゃんに多いですね。「愛犬はアクティブになりたい」「人は愛犬におとなしくしていてほしい」というお互いの気持ちの食い違いがないかどうかも考えてあげるとよいかもしれません。お散歩の後や思い切り遊んだ後などにスリングを使ってみると、愛犬がすんなり入ってくれることも多くあります」

そもそも愛犬が「腕での抱っこが苦手」という場合も

黄瀬さん「初めましてのお客様と出会った時、私たちervaがする質問があります。『わんちゃんは抱っこが好きですか?』…めっちゃ普通の質問ですよね(笑)。でも、これがいちばん大事なんです。もちろん『普通の抱っこは苦手だけど、ドッグスリングでの抱っこなら好き』という子もいます。そのような子であれば、ドッグスリング屋としてできることがあります。腕での抱っこでも暴れてしまう子には『ドッグスリングを購入する前に、まず腕での抱っこの練習をしてください』とお願いすることがあります。人と愛犬の関係性の構築が何よりも大切なものだと思うためです
 
なんでもかんでも売ることが目的ではなく、ドッグスリングによってより幸せになってほしい。そんなervaの誠実さが本当に魅力だと感じます。
 
このように、愛犬がドッグスリングで暴れてしまうときには様々な原因が考えられるのですね。もしかすると、サイズや愛犬の入れ方、使うタイミングを変えることで愛犬がスリングを嫌がらなくなる可能性もあります。愛犬がスリングで暴れてしまう時には『何に嫌がっているのか』を見極めてあげることが大切なのですね。

膝・腰・気管支…身体に不安がある愛犬にスリングは良くない?

ダックスフンド(胴長犬種)にスリングは良くない?

胴長犬種も使えるドッグスリング
ダックスフンドやコーギーなど「胴長犬」と呼ばれる犬種は腰への負担が心配です。ドッグスリングを使用するときだけでなく腕で抱っこする際にも、胴長犬種は背骨や腰へ大きな負担が掛かる「地面と垂直に立てた姿勢での抱っこ」は良くありません。胴長犬種は地面と背骨が平行になる「伏せ」に近い姿勢で抱っこしてあげることがポイントとなります。
伏せの姿勢に近く胴長犬種に負担が少ない抱っこの方法は「ダックス抱き」とも呼ばれます。ervaのドッグスリングはダックス抱きも可能ですので、胴長犬種のわんちゃんも多く愛用しています。
 
ervaご愛用中のミニチュア・ダックスちゃんたちのレビューは下記のページにてご紹介しています。

身体に不安がある愛犬にはervaの「多機能」タイプがおすすめ

黄瀬さん「ervaのドッグスリングはパテラやヘルニアを患っている子には基本的にお勧めしておりません。しかし、気管虚脱の場合はある程度の対策が可能です。気管虚脱の心配がある子の場合、私は『多機能』タイプをお勧めしています
 
『多機能』タイプには前開きのファスナーがある『アベルト』とファスナーなしの『ファーシル』の2種類があります。気管虚脱の子には『アベルト』の前開きファスナーが活用できるのだとか!
 
黄瀬さん「愛犬の体格によっては、スリングのフチが首に食い込んで呼吸が苦しくなってしまう場合があります。『アベルト』の前開きファスナーは、閉め切っておらず中途半端な状態でも勝手に開かないようロックが掛かる仕様になっています。なので、愛犬の首が苦しくないようにファスナーで調節してあげることが可能です。実はこれ、お客様から教えていただいた工夫方法なんです!」
 
ファスナーの前開きで首元の苦しさを回避
-愛犬の出し入れをスムーズにするための前開きファスナーでしたが、思わぬメリットもあったんですね!
 
黄瀬さん「そうなんです!もちろん、前開きファスナーがあることで愛犬を出し入れする際に愛犬の足が引っかかりにくくなることが大きなメリットです。『シンプル』タイプの場合は、付属品の『レザーベルト』をショルダーの部分に装着し、スリング開口部に向かってシュルシュルっとスライドさせるとスリングの深さが浅くなるので、首の締め付け感を軽減させることができます。小柄な子の場合は、プラスαで底に厚手のタオル等を敷いて調節してあげるとよいかと思います」
 
『レザーベルト』も本来はドッグスリングをコンパクトにまとめて携帯しやすくするアイテムかと思いますが、このようにスリングの微調整にも活用できるそうです。
 
スリングの大きさ微調整もできるレザーベルト
黄瀬さん「基本的に『パテラの子にはお勧めしていない』と言いましたが…通院のためにドッグスリングをどうしても使いたいと願う方も多くおられます。そのお気持ち、本当によくわかります。なので、パテラをはじめ愛犬の身体に不安があるけれど使いたい場合は、かかりつけの獣医師さんに許可をいただくことを推奨しています。ervaで推奨するドッグスリングでの抱き方の写真を獣医さんにお見せして、その状態が愛犬にとって問題ないかどうかを確認していただきたいです。『パテラ』『ヘルニア』などと一括りにしても、その子によって状態が異なります。もし獣医さんの許可があれば、使用する飼い主さんも安心できます。身体にトラブルがある子の場合は、機能性があることで極力負担をかけにくい『多機能』タイプを推奨しています
 
ervaが推奨する「ドッグスリングを使用するときの4つの抱き方」については下記のページで詳しく解説されています。

ドッグスリングの「選び方」と「使い方」のポイント5つ

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ポイント1:適した品質のものやサイズを選ぶこと

黄瀬さん「どうしても『わんちゃん目線』でドッグスリングの良し悪しを考えがちですが、『人の使い心地の良し悪し』にも着目していただきたいと思います。もちろん、愛犬に危険やストレスのないドッグスリングであることが重要です。しかし、愛犬の体重を支えきれない生地のスリングやサイズの合っていないスリングを使用すると、愛犬だけでなく着用する方への負荷が大きくなります。サイズが適していないために人の肩や腰へ悪影響を及ぼすドッグスリングは『良くない』と言えます」
 
ervaのドッグスリングには『多機能』タイプと『シンプル』タイプがあります。多機能タイプならサイズ調節が可能なので、体格の異なる方と共有して使うことに適しています。しかし「シンプルタイプの方が好み」という場合もありますよね。シンプルタイプはサイズ調節機能が付いていないので、体格が異なる方と共有するとサイズが合わず快適に使用できない恐れがあります。
 
シンプルタイプの方が好みであったり「予算的に『シンプル』タイプがいいな…」という場合でも、付属品を活用して愛犬に負担がないように微調整をしたり、愛犬に負担がないように出し入れする工夫をしたりするなどで対策できそうです。

ポイント2:ドッグスリングに入る姿勢が大切!

ドッグスリングに入っている間、愛犬は同じ姿勢のままになります。もし愛犬を不適切な姿勢でスリング内に入れてしまうと、愛犬の身体に大きな負担がかかったり、愛犬がスリングを嫌がってしまったりする恐れがあります。
 
ervaのドッグスリングはPennhip認定医である奈良県「新庄動物病院」の今本院長に「ドッグスリングの中で愛犬の姿勢に負担がないこと」を確認済み。股関節と膝関節を問題なく曲げてお座り可能である場合、ervaのドッグスリングは愛犬にとって負荷となりません。ervaの推奨する基本的な姿勢は下記の2つです。
・胴長犬種以外は「お座り」
・胴長犬種は「伏せ」に近い状態

この2つの基本姿勢を踏まえ、ervaのドッグスリングでは4つの抱っこ姿勢が可能です。

 
ervaの「4つの抱き方」については下記ページで詳しく解説しています。

ポイント3:落下や脱走を防止する

ドッグスリングの中には愛犬を入れる部分に蓋が付いている製品もありますが、ervaのドッグスリングは蓋がない状態です。蓋のないドッグスリングを使用する際には、愛犬の転落や脱走を防止する工夫が必要です。こちらでは、ervaのドッグスリングを使うにあたって愛犬の転落や飛び出しを防止するコツを4つお伺いしました。

1.オプション品を活用する

黄瀬さん「飛び出しや落下が心配な方には、オプション品の『飛び出し防止用ストラップ』や『カラビナ』を付けていただいています。多機能ドッグスリングにもシンプルスリングにも、内面上部にストラップやカラビナを付けられるループがあります。『カラビナ』の方がストラップよりも愛犬とループとの距離が短くなりますので、よりスリング内に愛犬を固定してあげやすくなります。フレブルちゃんのパパママはカラビナを選ばれることが多いですね」
 
飛び出し防止ストラップで安全対策
-ストラップもカラビナも、首輪とループで繋げるのですか?
 
黄瀬さん「首輪ではなくハーネスに付けていただく方がより安心です。骨格が華奢な子や気管に心配がある子は特に、首輪に繋ぐと首への負荷が大きくなってしまうためです。そして、万が一スリング内から落下してしまった際に首を吊ってしまう恐れもありますので、首輪ではなくハーネスとループを繋ぐ方が安心かと思います」

2.かがむ際に手を添える

黄瀬さん「あとは、かがむ時に注意することですね。これは人間の赤ちゃんがスリングを使う時とも共通するのですが、かがむ時には必ず手で支えてあげることが重要です

3.室内の安全な場所で練習する

黄瀬さん「ぶっつけ本番で屋外使用をせず、まず初めに室内でスリングに入る練習をすることも大変重要です。愛犬の逃走や落下を防ぐために、初めてドッグスリングを使う時は安全が確立された室内で、ぜひ座った状態から練習していただきたいと思います。ソファーの上やベッドの上などのクッション性のある場所で練習すると、万が一落下した際にも安全性が高いでしょう」

4.愛犬を出す時はしゃがむ

ドッグスリングから安全に出るシーズーちゃん
黄瀬さん「愛犬をドッグスリングに入れて立っている状態から、まずは着用する方がしゃがんで腰を低い位置にしてから出します。愛犬の前足からゆっくりと床に下ろしてあげましょう。
 
-ちょっとの工夫と注意で安心感が上がりますね!
 
黄瀬さん「そうですね、私たちは使う人と愛犬の安心を考えてドッグスリングを作ってはいますが、どうしてもスリングだけでは解決しきれない問題がありますので、使う方にプラスαの工夫でサポートしていただく必要があります

ervaは製品アップデートを継続中!

リングカラビナで密着度アップするチワワちゃん
黄瀬さん「実は、今季の『冬用スリング』から1つ改良した部分があるんです!これはシンプルスリングの冬限定バージョンなのですが、やっぱりシンプルスリングは入れ口がパカパカしやすいのが不安ですよね。そこで、入れ口をリングカラビナで絞れるように改良しました。来年の新製品にも採用する予定でして。多機能ドッグスリングは現在『第2世代』が最新なのですが、ベルトを調節して入れ口を絞れる仕様にしたことが『第1世代』との違いです。このように製品自体にも改良を重ねて、人と愛犬の安心を叶える努力を続けていきます
 
ervaさんのアップデートに期待が高まります!冬仕様のシンプルスリングも要チェックですね〜!ふわふわであったかそう♪
 
ervaのドッグスリングに関しては、飛び出し防止用ストラップやカラビナといった付属品を活用することで安心感が高まります。ただ、この付属品も「必要な子と不要な子」がいるとのことです。愛犬の性格やドッグスリングを使用したときの状況などを踏まえて安全対策をとることが重要ですね。

ポイント4:熱中症対策をする

夏用メッシュスリングに入るフレブルちゃん
暑い時期はスリング内の温度が上がりやすくなります。短頭種と呼ばれるマズルの短い犬種は、その鼻の形状ゆえに口呼吸「パンティング」で体温調節することが苦手です。特に「呼吸器系にトラブルを抱えやすい短頭種の子」は特に熱中症対策が必須となります。
ervaのドッグスリングに関しては、スリングのポケットに保冷剤を入れたり、夏はメッシュスリングを使用するなどの工夫ができます。
 
黄瀬さん「長時間ドッグスリングの中に愛犬を入れ続けることも良くありませんが、真夏の日中の場合は地面に下ろすのも返って良くない場合があります。夏の日差しに熱せられたアスファルトに近いほど高温になるためです。地面との距離が遠くなるスリング内の方が暑くないということがあるので、保冷剤を入れてあげたり『通気性のよいメッシュタイプ』を選んだりして工夫していただければと思います」

ポイント5:適度に愛犬を外に出して休憩させる

たとえ正しい姿勢をとっていたとしても、長時間同じ姿勢でいることは愛犬にとって負担になる恐れがあります。長時間使用する際には、愛犬の様子を見ながら適度に出し入れしてあげるようにしましょう。熱中症対策としても、地面が暑くない日陰で適度に休ませてあげるとよいでしょう。

結論:スリングは「選び方」と「使い方」次第で人と犬に良くも悪くもなる

今回はerva代表の黄瀬さんに「ドッグスリングって愛犬に良くないの?」という質問にお答えいただきました。結論を言いますと、ドッグスリングは「選び方」と「使い方」によって人と犬にとって良くも悪くもなるということがわかりました。
 
ドッグスリングの中から見つめるシュナウザーちゃん
ドッグスリングを選ぶ・使うにあたっては、下記の4つのことが重要だと黄瀬さんは言います。
 
・適した品質とサイズを選ぶこと
・どのような場面で必要なのかを考えて選ぶこと
・愛犬の性格や気分を汲んで使用すること
・正しく使う練習をすること

 
黄瀬さん「残念ながら、ドッグスリングは万能のアイテムではありません。私たちervaは使う人と愛犬のことを第一に考えてドッグスリングを作っていますが、より安全に、より快適に使用するには『使う方のご協力』も必要です。まずは、愛犬の体格や体調を踏まえて選ぶこと。愛犬の性格や気分を尊重して使用すること。正しい使い方ができるよう愛犬と共に練習をすること。そして、どんな場面に使いたいのかを踏まえてアイテムを選ぶことも重要です。
 
愛犬と一緒にお茶を楽しむ
「『通院を快適にするため』なのか『おでかけを楽しむため』なのか、はたまた『おうちの中で家事をしながら愛犬を抱っこしてあげるため』なのか…目的によって、愛犬の状態によって、適したアイテムは異なってくると思います。人と愛犬にとってドッグスリングが最適である場合もありますし、バギーやキャリーバッグの方が良い場合もあります。私は、たとえそれがドッグスリングではなかったとしても、人と愛犬にとって最適なアイテムと出会えることを願っています。
 
その中で『ドッグスリングが良い』と求める方のご期待に全力で応えられるよう、私たちervaはドッグスリング屋として、製品開発や製品改良に取り組んでいます。愛犬家の皆さまと愛犬たちとの時間が、より豊かなものになるよう全力でサポートいたします。ドッグスリングをより良く使用するために最も重要なのは、愛犬との対話だと私は思います。ドッグスリングを選ぶ時も、購入する時も、使う時も、ぜひ愛犬のことを想いながら考えていただきたいなと思います」
 
ervaの看板犬ノンムー
ervaは購入前のお問い合わせにも丁寧に対応しています。使う方と愛犬にとって「ドッグスリングが良いのか悪いのか」に悩まれた際には、ぜひお気軽にご相談してみてくださいね。

犬用抱っこ紐専門ブランドerva