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3歳以上の犬の87%が歯周病の可能性あり
「9歳にもなったら、そりゃ歯周病にもなるわ〜」 なーんて、思った方!9歳だからではないのです。 Top Universities for Veterinary Science in 2019 (獣医学で世界TOPの大学ランキング2019)で1位の大学、イギリスの「Royal Veterinary College, University of London」のレポートにはっきり、書いてますのでご覧ください。Periodontal disease is the most common infectious disease of adult dogs. It is a progressive, cyclical inflammatory disease of the supporting structures of the teeth and is the main cause of dental disease and early tooth loss in dogs and cats. It affects over 87% of dogs and 70% of cats over three years of age.
訳:歯周病は成犬にとってもっとも一般的な感染症である。歯周病は、歯周組織の周期的な炎症であり進行性がある。歯周病は、犬・猫における歯の病気および早期の歯の喪失の主な原因である。3歳以上の犬の87%以上と猫の70%以上が罹患している。
3歳ですと!?
うちの子9歳なんですけど!
しかもですよ、3歳になるまでにほとんどの犬に歯周病の傾向があると(アメリカ獣医歯科大学)に書いてあります。
By three years of age, most dogs and cats have some evidence of periodontal disease.若いからうちの子大丈夫。 ではないのです!!!!!!!! 若ければ若いほど、歯周病のリスクも下がります。治療方法も選ぶことができます!!
歯周病の主な原因とは?
歯周病というのはすぐに罹患してしまうのではなく、 唾液中のねばねば→歯垢→歯石 何度も何度もこのループが発生することにより、歯周病へと繋がります。以下、「American Veterinary Dental College」より。Periodontal disease begins when bacteria in the mouth form a substance called plaque that sticks to the surface of the teeth. Subsequently, minerals in the saliva harden the plaque into dental calculus (tartar), which is firmly attached to the teeth. Tartar above the gum line is obvious to many owners, but is not of itself the cause of disease. The real problem develops as plaque and calculus spread under the gum line. Bacteria in this ‘sub-gingival’ plaque set in motion a cycle of damage to the supporting tissues around the tooth, eventually leading to loss of the tooth. (参照元:https://www.avdc.org/periodontaldisease.html 検索日:2019/7/18)
訳:歯周病は、口の中のバクテリアが歯の表面に付着するプラークと呼ばれる物質を形成するときに始まります。その後、唾液中のミネラルが歯垢を歯石(歯石)に硬化させ、歯石にしっかりと付着させます。歯肉線より上の歯石は多くの飼い主には明白ですが、それ自体は病気の原因ではありません。真の問題は歯垢と歯石が歯肉線の下に広がるにつれて発生します。この「歯肉下」プラーク中の細菌は、動いて歯の周囲の支持組織に一連の損傷を与え、最終的には歯の喪失につながります。歯肉線の下のバクテリアは毒素を分泌し、それが治療されなければ組織損傷に寄与する。これらのバクテリアは動物の免疫システムも刺激します。
見た目が綺麗だから大丈夫。ではなく、
重要なのは、歯肉の中!中!中!中!

歯周病を放置するとどうなるのか
American Veterinary Dental Collegeによると、Effects within the oral cavity include damage to or loss of gum tissue and bone around the teeth, development of a hole (‘fistula’) from the oral cavity into the nasal passages causing nasal discharge, fractures of the jaw following weakening of the jaw bone, and bone infection (‘osteomyelititis’). Bacteria from the mouth can enter the bloodstream and are carried around the body. Studies in dogs have shown that periodontal disease is associated with microscopic changes in the heart, liver, and kidneys.・歯周組織(歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨)の損傷、喪失(結果、歯が抜け落ちることも) ・鼻水、瘻孔 ・顎骨が弱くなり、骨折、骨感染症(「骨髄炎」) ・心臓、肝臓、腎臓病への影響 あと、根尖膿瘍と言って、眼の下辺りが膿む病気があります。ちょっと、恐い写真ですがこちらをご覧ください。

無麻酔で歯石取りをやってはいけない6つの理由
あと、金属製のスケーラー等で、歯石取りをやっていたら、絶対にやめてください。念のためですが、歯垢ではありませんよ、歯石取りの話ですよ。 歯垢は歯ブラシやデンタルシートで簡単に除去できます。これがわたし達にできる最大の歯周病予防です。でも歯石になってしまったら、もう素人の出番はありません。実は、わたしも麻酔には抵抗ありましたし、無麻酔でやってあげる方が犬の負担がないから良い。そう思ってました。 ですが、 無麻酔でスケーラーで歯石を取ってしまうと、 歯を傷つけます 犬が痛いです 以下、日本動物歯科研究会の資料より、無麻酔が危険な理由をまとめてみました。理由1 歯石の表面を傷つけてさらに歯垢がつきやすくしてしまう。
歯石をとっても、訓練を受けていないヒトが歯石を除去し、歯面のポリッシングや歯磨き 指導をしない、鉗子などで歯面の歯石だけをとる といった行為により歯垢のつきやすい 歯面を作ってしまいます。*ポリッシング=研磨 歯石だけ取って、見た目が綺麗になったので安心〜!!とか思ってちゃだめなのです。 スケーラーで傷つけた歯の表面はざらざら。せっかく愛犬のためを思って綺麗にしているのに、歯垢が付着しやすい環境を自ら作ってしまっています。これぞ、マッチポンプ!!
理由2 愛犬の口の中を傷つける
ハンドスケーラーや鉗子で歯石を取るのは、危険な行為です。これらの器具は、先端に刃物が付いていて、歯面ではよく滑ります。イヌやネコは動く、スケーラーは滑るので、歯肉や舌、口腔粘膜を容易に傷つけます。すでに愛犬の口内に炎症があった場合、素人の目では見分けられませんから、スケーラーでさらに傷つけてしまうと、痛みが増します。最悪です。 わたし達が野外のイベントに出店していた時、歯石取りブースがありました。スケーラーを使ってわんこの歯磨きをしていたのですが・・・わんこの中には、お店の人を噛む子もいました。「日々歯磨きトレーニングしないからですね」とアドバイスを受けてましたが、すでにわんこの口の中に炎症がある場合、スケーラーをあててしまうと痛いです。噛むのは当たり前です。あと、見知らぬ人に口の中に刃物を入れられるって、相当恐ろしいです。自分は無理。
理由3 歯を折る。最悪の場合神経を露出させてしまい、痛みがでる
鉗子で歯石を割って除去するときに、歯を一緒に折って露髄させてしまった例もあります。とれた歯石がのどに詰まったらこれも大変です。わたし自身のことですが、筋トレ中にダンベルで前歯を折ってしまったことがあり、神経が出た(露髄)経験があります。口全体に響き渡る痛み、痛み止めのロキソニンを飲んでも痛みは取れず!! 悪夢です
理由4 ぐらぐらした歯が折れたり、顎の骨を折ってしまう
歯がぐらぐらしている状態で歯石をとろうとすれば、歯根を残したまま歯が折れる、あるいは顎の骨を折る危険もあります。歯は歯槽骨(下記6)によって支えられていて、顎骨とも繋がっています。力がかかってしまい、顎の骨を折ってしまう危険性が。チワワとか小型犬ほどリスクが高いのは容易に想像がつきます。

理由5 すでに歯肉に炎症がある箇所を悪化させてしまう
ポケット内の歯垢や歯石を取ろうとして、炎症を起こしている歯肉にスケーラーがあたっただけで出血が起き、痛みを伴います。歯肉より上に使うスケーラーでは、歯肉が傷だらけになり状態はさらに悪化します。歯肉が後退して一歯根が見えているところをスケーラーでいじっても痛みが生じます。痛みを感じた犬や猫は、術者を傷つけることさえあるはずです。このような危険な行為は動物に痛みばかりでなく恐怖感を与えることになります。わんこは痛い!と言えません。何回も言ってごめなさい!なのですが、日々の歯磨きを嫌がってお母さんを噛もうとするのは、何も歯磨きが嫌なのではなく、ハブラシやスケーラーが歯や歯肉に当たって痛いからかもしれません。必要なのは、歯磨きトレーニングではなく、歯科医による治療なのかもしれません。
理由6 最悪の場合、口腔内組織が傷つき、歯以外に問題が生じる
乱暴にすれば、唾液線(耳下腺と頬骨腺)の導管の開口部を傷つけ、周囲の粘膜を傷つけるので、危険です。大きな血管を切ってしまいかねません。マジで重要なので、再度言います。 素人による「歯石」取りは愛犬をリスクに晒してしまいます。歯石取りは、爪切りや耳掃除と同じではありません。毎日の「歯垢」除去がわたし達家族のできる最大の歯周病予防なのです。 「でも、やっぱり麻酔はしたくない」 その気持ち、めちゃくちゃ分かります。愛犬にもしものことがあったらどうしよう。わたし だって悩みました。では、麻酔での死亡率の資料がないか探してみました。米国獣医麻酔専門医の佐野洋樹先生の記事がこちらに詳しく掲載されています。以下表の元資料はASA Physical Status Classification System(米国獣医麻酔学会)

ASA1〜2の健康な犬であれば1万匹中0.5匹(0.05%)(※1)、ASA3〜5などの重篤な犬であれば1000匹中10匹以上(1%以上)です。緊急性があったり、手術内容が複雑であったり、麻酔時間が長かったりすると麻酔のリスクが上がります。ただし、最近の麻酔薬を使用しているのであれば麻酔薬に対しては特に問題が無いと言えます。以上は外国のデータですが、日本の大規模動物病院のデータを見てもほぼ同じようなデータがあります(※)。
日本の犬の麻酔関連死亡率若干が高いのは日本の犬の方が海外の犬よりも小さい傾向にあるからだと推測されます。人間の場合は治療の意味を理解していますから、先生に協力的に口を開けたり閉じたりできます。多少我慢もできます。でもわんこは・・・・?口の中は元々誰かに触られる領域ではありませんから、他人に触られるのはさらにハードルが高くなります。 老犬になると他の病気も増えるかもしれません。麻酔も難しくなります。麻酔ができなければ治療ができません。 「麻酔をかける」となると、ついつい麻酔のことだけを考えてしまいますが、0.05〜0.3のリスクと、歯周病になった状態を続けるリスクとどちらが大きいのか。 うちのムーちゃん、手術前は顎下を触ると嫌がっていましたが、術後1週間の今、顎下を撫でても嫌がりません。きっと、前歯が痛くて触ってほしくなかったのだと思います。(前歯下段2本、歯周病のため抜歯) 何卒早めに獣医師と相談してみてください。 あと、 硬いおもちゃや、骨・ヒヅメはNG 歯が折れます! リスクは前述したとおり、歯が折れて神経がむき出しになってしまうと痛みを伴います。 「骨やヒヅメを噛んでいたら、犬は歯磨きなんていらないよー!」 は大間違いです!! わたしは歯が折れることを知らず、愛犬のノアも好きそうだし、噛むと歯石が取れていたので、鹿の骨を噛ませてました。結果、奥歯(右上顎第4前臼歯)が折れてました・・・・。歯科専門医に診ていただいたところ、幸いにも神経は出ていなかったので抜歯せずに済みました。 「うちの子折れてないし、大丈夫よ〜」 お願いです。獣医師(なるべく歯科専門医)に判断してもらってください。 ちなみに、アメリカの獣医歯科専門医、歯科研究者で構成された米国獣医口腔衛生協議会認定(VOHCマーク)の、歯に良いとされる製品のリストがここに載ってました。 例えば、これです。